ブログでも紹介している、ガリアーノスクールのヴァイオリンを、昨年末、ロンドンのディーラーに鑑定依頼していました ("Violin, School of Gagliano, Naples circa 1850"です)。
実は、某日本の著名ディーラーさんにこのヴァイオリンを見せた際、「これはイタリアンに見えないなあ・・・。」と言われ、少し議論になりました。その時、ちょっと不安になったので、ロンドンのオークショナーにも再度照会を掛け、このヴァイオリンの由来の調査を進めていました。
オークショナーによると、このヴァイオリンは、フローレンス郊外で小規模ながら代々ヴァイオリン製作を行ってきたファミリーのコレクションの一本なのだそうです。更に、なんと、その製作家ファミリーの初代はあのビシャッキと兄弟弟子で修業をしていた方なのだそうです。
オークショナーによると、当該ヴァイオリンも、年代的に見てその頃のものであろうとのこと。また、このファミリーは代々イタリアに住んでいるファミリーであり、ドイツ圏の楽器を入手することは考えられないとのことでした。また、ヴァイオリンの形もニスもストレートに「Naples」だろうとのこと、誰が見てもナポリスクールのはずだがとのことでした。
さて、オークショナーも著名ディーラーに自身の鑑定眼を否定されたと感じ、怒り心頭だったようで、「ロンドンのディーラーや鑑定家の意見も聞くから時間をくれ!」とのこと。Fedexでヴァイオリンをロンドンに送り、オークショナーに楽器を預けて、しばらくヴァイオリンの身上調査を進めていました。
年末年始のクリスマスホリデーも挟んだので、時間がかかっていたのですが、幸いSotheby'sやChristie'sのFine Strings Instrumentのコンサルティング、鑑定でも有名な、Peter Biddulph氏 http://www.peterbiddulph.com/ の意見を頂くことができました。氏曰く、「誰が作ったヴァイオリンかは特定できないが、明らかにこのヴァイオリンはイタリアンのヴァイオリン」との見解をいただきました。製作家がわからないために「鑑定書(Certificate)」は書けないものの、「Opinion Letter」は作成いただけることになりました。
海外のオークショナーの方も、自身の鑑定眼がただちにオークションの信用の問題につながるので、著名ディーラーに否定されたときは、真摯に対応していただけることが改めて分かりました。特に、LondonとNew Yorkのオークショナーの方々は、丁寧に対応いただけるなという印象です。
個人的に、このような楽器の真贋や由来の調査は、苦にならないものです。
今回の一連のやり取りも、結構楽しんでいます。
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