2011年10月16日日曜日

A Violin by Luigi Rovatti, Buenos Aires 1929

先日、ロンドンのオークションで、気に入った楽器に巡り会ったったので、頑張って買いました。
このところの円高で、英国ポンドが驚くほど安くなったので、買い時かなとも思い、ちょっと無理してみました。


今回のオークションは、このところの金融危機で、あまり盛り上がらず、売れ残りのロッドも多かったです。


さて、落札した楽器ですが、ラベルがLuigi Rovatti fece in Buenos Aires ann 1929となっていました。


Luigi Rovatti(1861年ゲノア生 - 1931年ブエノス・アイレス没)
-1880?年以後~1885?年以前ゲノア(Genova)でエンリーコ ・ ロッカに師事
-1885年~1931年ブエノス・アイレス(Buenos-Aires)で活動



という経歴のようです。
Rovattiさんは、あまり経済的には恵まれなかったらしく、ブエノスアイレスでも、ご苦労をされた方のようです。


どうやら、この楽器は、Rovattiさんが亡くなる2年前の作品のようです。晩年の作ですね。






現在、ロンドンで発送の手続きを進めているところです。
来月中旬ぐらいには、日本に到着しそうです。到着が楽しみです。



2011年10月10日月曜日

An Interesting Violin, probably Fussen circa. 1760 修復(その2)


先日、ブログにアップした、Fussenのオールドバイオリンですが、修復後、このような形になりました。写真の関係でちょっとてかてかしていますが、もう少し、塗装の艶が落ち着いた、風情のある楽器に仕上がっています。



柘植材のフィッティングをつけて見ました。古い楽器に良く合い、趣が感じられるようになりました。
うーん、やっぱり、お尻がいびつですね(笑) チャーミングです。


 横から見た限り、あまり、ハイアーチ具合は分かりづらいですね。


 この写真を見ていただけると、まさにオールドイタリアンのハイアーチっぷりが、お分かりいただけると思います。


F字抗の割れも、膠でうまく接着してもらいました。まずは、しばらく安心といったところです。


ブッシングもご覧の通り、痛々しいですが、直しました。

さて、肝心の音ですが、しっとりとした、シルバートーンです。 艶やかながら、落ち着いた音色です。Gaglianoのように、カンカンと音は出ませんが、低音から高音まで、柔らかく澄み通るように鳴ってくれます。

柔らかい弓との相性が良いようで、もう25年以上使っている柔らかな日本製の弓と相性が良いみたいです。

ただ、この楽器、右顎宛の下の表板と裏板が剥がれ易い持病をもっていることも分かりました。汗がしみこむと膠がはげてしまうみたいです。先日、千駄ヶ谷の楽器屋さんに調整に持ち込んだときも、その箇所が剥がれていたため面倒な修理をお願いすることになってしまいました。

250年以上前の楽器なので、何かとコンディションに気を使う楽器のようです。
とはいえ、奏いていて、一番、癒されると感じるのは、この楽器かなあと感じています。

うちの連れもこの楽器がお気に入りのようです。
「ぜったい手放しちゃダメ」って言っています。

2011年10月9日日曜日

Dog Year

先日、会社の若手(2年目)と話をしていました。ひょんな事から、ソフトバンクの話になりました。今や、Vodafone 買収以降、i Phone 人気で、飛ぶ鳥を落とす勢いの会社ですね。その若手は、すっかりソフトバンクといえば、携帯電話事業をはじめとするIT・通信事業の会社と理解していました。それ自体は間違いでないのですが、今の若手コンサルは、ソフトバンクの過去の事業を全く知らず、少し驚きました。

僕が大学を卒業し、投資会社での仕事を始めたころ、ソフトバンクといえば、PCソフトの卸売り会社でした。どのようなPCのソフトでも扱っていたので、PCソフトの銀行=ソフト・バンクという名前になったというように聞いていました。東京の郊外に大きな倉庫を持っていて、その中に、PCソフトが整然と並んでいたと記憶しています。MSXのソフトも並んでいたのにはびっくりしました。(当時で既に15年落ち位のソフトもありました) 

それから、孫さんが、タイムマシン投資戦略(アメリカ等で成功した事業・注目されている事業をいち早く日本に持ち込むという投資・事業戦略)で事業ドメインを拡大、変革させていったのを記憶しています。このころのソフトバンクの従業員の方の話を聞くと、まさにDog Year!日々、孫さんの一言で事業構造が変革していったのだそうです。

ソフトバンクの事業戦略の転換・変革の大胆さは、さすがですね。若手が、ソフトバンクの過去の事業を知らないというのには、少々驚きでしたが、僕も歳を取ってきたのかもしれません。

ソフトバンクの事業転換・変革のダイナミックさは、驚かされます。
現在のように、日々めまぐるしく技術革新が進む世の中では、企業もこれ位の変革のスピードが求められるのかもしれませんね。

2011年10月2日日曜日

An Interesting Violin, probably Fussen circa. 1760 修復(その1)

この楽器、左右がいびつで、ユニークな楽器ですよね。

以前ロンドンのオークションで入手した楽器です。"An Interesting Violin, probably Fussen circa. 1760"とされていました。ラベルは、"Giachimo Cappa Fecit a Salvius Anno 1697"となってます。

さて、Fussenですが、今の南ドイツの都市で、ヴァイオリン発祥の地とも呼ばれていることろです。

当の楽器ですが、このお尻のいびつ具合、形のユニークさが如何にもこの頃の楽器らしく魅力を感じませんか? 写真では分かりませんが、オールド特有のハイアーチ具合は、まさにオールドイタリアン!すっかり気に入ってしまいました。

入手時の状態はまずまずの状態でした。
表板の顎宛近くがオープンしていて、右側F字の上部が割れていたので、修理が必要でした。裏板の割れが不安だったのですが、ニスのヒビのみで、健康な状態でした。ペグボックスがブッシングの修理が必要な状態でした。

こちらも、知り合いの職人さんにお願いして直してもらいました。
どのような楽器になったかは、また改めてご報告します。

2011年10月1日土曜日

Violin, School of Gagliano, Naples circa 1850 修復(その2)

以前、ブログにアップした、ロンドンのオークションで落札したGagliano Schoolのヴァイオリンですが、修復後このようになりました。

なかなか味のある楽器になりました。


ほこりなどの汚れも落としてもらって、ピカピカになりました。フィッティングにも柘植材のものを使いました。表板の開いていた箇所もきちんと修理していただきました。


さて、肝心の音ですが、365mmの大きさにも関わらず、高音がカンカンと鳴ります。また、G線もハイポジションまで深い音が出ます。150年以上経っている楽器だけあって、発音も良く、非常に奏き易いです。ビオラテイストな音ではないです。

先日、千駄ヶ谷の工房に持ち込み、テールガット長や魂柱を調整したのですが、更に良く響くようになりました。うーん、Enrico Politiより、鳴るようになりました。

ちなみに、この楽器は、自宅での演奏はNGとなっています。
連れ曰く、「高音が非常に良く鳴り、音も大きいので、自宅マンションでの演奏は、御近所迷惑」とのことです。自宅で奏くときは、金属のミュートを取り付けることになっております。

ヴァイオリン奏きには、悲しい限りです。